伝説のお菓子屋さん、Myšák再オープン

チェコのセレブが通った伝説の喫茶店ミ


プラハはこの週末、雪が降りました。手袋と帽子がないとつらい厳しい寒さ。

休みだし寒いしで、家でぬくぬくしていたい時に限って吹雪の朝のなかプラハ城へ行く約束アリ。。。

T.G.Masaryk像の前で待ち合わせ、レンズ越しにまるで古い絵のようなプラハ城正門前の様子。

とあるグループに混ぜてもらって詳しいガイドさんと観光客気分でお城を見学。といっても今回は旧王宮内のヴラジスラフ・ホール(現在一部工事中)と黄金の小路のみ。

流れるように、でも機能的に丸い天井を錯綜する梁がいつ見ても見飽きない後期ゴシック建築会心の作。窓は一部ルネサンス様式になっています。
1493年から1503年にかけてベネディクト・リートによって作られたこのホール、縦62m、横16m、高さ13mの中央ヨーロッパでは教会以外最も広いホール。当時の人々は、この広さなのに柱がないことに驚愕したそう。馬上試合や宴会などに使われ、1934年からは大統領選挙の布告が行われています(ここ最近は例外でプラハ城内のスペインホールにて布告)。



ほんのり屋根に積もった雪が、黄金の小路(Zlatá ulička)の可愛らしい家々をお菓子の家のように魅せます。

絵本のなかのような色あいは、イジートゥルンカ(Jiří Trnka、チェコパペットアニメーションの有名な監督さん)監修のもの。
みんなが写真を撮ってるNo.22の青い家は、フランツ・カフカ(Franz Kafka)が一番仲良くしていたという一番下の妹、オットラが借りていた家で、騒音アレルギーだったカフカが「一番静かに落ち着いて執筆できる場所」として何年か通ったところ。

聖ヴィート教会以外のプラハ城内で、いくら時間がなくてもここだけは外さんといて、という場所が以上2箇所。

さて本題。時はゴシックからトリップして20世紀前半、キュビズムの時代へ。

ヴァーツラフ広場から程近い、ヴォディチコヴァ(Vodičkova)通りに満を持して復活を遂げた伝説のツクラールナ(cukrárna)こと、チェコスロヴァキア第一共和国時代の人気甘味処“ミシャーク(Myšák)”が再オープンとあって、連日長い列ができました。一般オープンの土曜日のお店前は混んでるトラムの中状態。

ヴォディチコヴァ通りのキュビズム?でピンと来た方は、かなりの建築オタクかリビチカ日記オタク!(いらっしゃればですけど…)
以前の日記のココで書いていますが、途中、崩壊の危機を乗り越えて改築を終え、新聞やテレビでも鳴り物入りで再オープンの日を迎えました。

通りに面した1Fにはアイスクリームとコーヒーのみ注文できる小さなカフェ・スペースがあります。

そして階上の広いカフェスペースへ上がる階段のところ、当時のスタッコ画を忠実に再現した天井をお見逃しなく。

そして店内にはキュビズム・デザインの鏡がついてるドアがあちこちに(嬉)!

2年前の記事のなかで、このミシャークの入っている建物のファサードを「ロンドキュビズム」と書いていますが、私が通っている建築講座の先生、建築歴史家のZdeněk Lukešさんによると間違いだそう。キュビズムというよりはアール・デコのくくりに入るとのこと。このファサードをデザインした建築家ははっきりとした記述がないのですが、関係者の日記などから、あのヨゼフ・ゴチャール(Josef Gočár)ではないかと推測されています。同時期の彼の有名な作品、Na Poříčí通りにあるレギオン銀行も、よってアール・デコ様式にカテゴライズされます。

ちなみにこのLukešさんもカフェ好きで、20世紀の建築の専門家なので一般公開に先駆けた関係者オープンの日に訪れたそう。そこでインテリアについて記者から「あなたなら他にどのようなデザインのものがここに合うと思われますか?」と尋ねられ、「キュビズムデザインのお菓子」と真面目に答えたそうな(本人談)。既にキュビズム博物館内のカフェ、Grand Cafe Orientにキュビズム・ドーナツというのがあるんですが、私的にはダメ出しさせてもらいたい、ぬるいデザイン(笑)。Myšákには是非ともちゃんとしたキュビズム・スイートを考案してもらいたいところです。


店内の家具はイタリアから取り寄せたものだそうですが、いまいち色が白すぎて明るすぎる感じ。オリジナルの写真から受けるような、暗い感じにしてほしかったな〜。でも入口やドア、1Fの床のモザイク、大理石の階段など地上階のインテリアのほとんどは当時のオリジナルを生かしているのだそう。スタッフが博物館へ当時の写真を検証に通って細部まで再現しようとしたため、改築に3年もの時間が費やされたのだとか。古いものをできる限り後世に残そうという姿勢は、尊敬できるところ。


階上のカフェ・スペースでいただけるスイーツはたくさんあります。価格帯は40〜130コルナぐらい。当時から評判というココのキャラメルがたっぷりかかったTiny Myšák(“小さなネズミちゃん”)という名前の、創業者František Myšákのレシピをもとに再現した一品(70コルナ)を試してみました。オーソドックスな味だけどキャラメルは確かに美味しい。


初来店だから定番を、ということで“Coffee à la Myšák”75コルナを注文。コーヒーは香りよくなかなかの味でした。
生クリームの上にも自慢のキャラメルがかかっています。

1904年に創立されたこのツクラールナ、1911年に現在のVodičkova通り31番地に移ります。通った有名人は多数。チェコスロヴァキア初代大統領のT.G.Masaryk(ここのケーキで80歳を祝ったのだとか)をはじめ、Beneš大統領、1949年以降国営化されたあとも、Gottwald大統領らが通っています。政治家のほか、Oldřich Nový(俳優)、Ema Destinová(オペラ歌手)、テニスプレーヤーのKoželuhなどなど。

店内にはリアルタイムで通っていたと思われるお年を召した方々が目立ちました。

まだオープンしたばかりで入店するのに並ぶかもしれませんが、カフェ・スペースは140席のキャパシティなので順番はわりとすぐ来ます。第一共和国時代のチェコスロヴァキアの雰囲気を感じに、またすいた頃を見計らって訪れてみたいと思います。


◇Cukrárna Myšák◇
・Vodičkova通り31番地(トラムのヴァーツラフ広場駅からヴォディチコヴァ駅の間にある)
・営業時間:年中無休、午前8時〜22時(ただし閉店時間は調整中のよう)