世界でひとつだけのキュビズム教会

キュビズムランプを堪能


全国のキュビズム・ファンのみなさま、お待たせ(?)しました。前からその存在だけは聞いていたものの、不定期にしか公開されないとあって訪れる機会がなかったキュビズム様式の教会を、プラハから東へ1時間ほどの小さい町、ペチキ(Pečky)に訪ねました。

プラハはマサリク駅から、パルドヴィツェ(Pardubice)行きの最新の電車に乗り込みます。途中、“チェコの新幹線”、噂のペンドリーノ(Pendolino)とすれ違いました。

イタリアから仕入れたこの高速電車、チェコの良識からは「ドイツや日本からならわかるが、なんでイタリアからわざわざ高速電車を買うんだ?」と例によって購入担当者のイタリアコネクション(要は賄賂)が疑われ、故障続きだったときは、それ見たことかと非難ごうごうでしたが、最近は軌道に乗っているようです。

ペチキの街は、この教会以外これといった見所はなさそうな本当に小さな町。駅前の一等地をアメリカの会社(何の会社かは聞き逃しました…)が購入したそうですが、地元民は給料が安いと文句を言ってるんだとか。

そんな駅前で面白いポスター発見。

wasabi”music barって。。。確かにチェコはお寿司ブームといえるかもしれないですが。。。刺激的な音楽をかけようっていうコンセプトかも。いや、よく見るとルツェルナみたいな懐メロラインナップ…でもコワいもの見たさで行ってみたい気もします(笑)。

さて、キュビズム教会は駅から歩いて15分ほど。

外観では気づかないぐらいですが、中央の塔の下の窓など、ディティールを注意してみるとわかります。

表口よりも裏口が素敵(笑)。

なんといってもここの素晴らしさは床のデザインからパイプオルガンにいたるまで、インテリアがほぼ全て建築家Oldřich Liska(1881-1959)のキュビズム様式で作られていること。

フス派の教会なので、十字架もなし、派手な装飾もなし、ステンドグラスもごくシンプルなものですが、徹底したオリジナル・キュビズム・デザインは世界にここひとつだけという驚くべき教会なのです。

特徴は美しいランプの数々…。



木製ベンチもキュビズム

祭壇ももちろんキュビズムです。

そしてこの説教机も石製のキュビズム。徹底してます。

祭壇上の寄付を入れるこの木製の箱には、フス派のしるしの杯が彫られています。

この教会のことならおまかせあれのガイドさん。「キュビズムはご存知のようにフランスでブラックとピカソによって始められた芸術運動だけど、ここが大事! 建築はフランスにはありません。ここチェコにしか残っていないんです。ということは、ここは世界でひとつだけのキュビズム・インテリアを持つ教会なんです。プラハにも黒い聖母の家がありますが、あれはオリジナルではないんですから(建て替えたと言いたいらしい)ね…(延々と講義が続く)」。

時々は手元の資料にも目を落としますが、ほとんどこの膨大な情報が頭の中に入っている彼。チェコの地方のこのようなガイドさん(というかオーナーであるとか、牧師さんであるとか遺族とかの直接の関係者なことが多い)の質は本当に高いといつも感心します。


講義の後は、椅子に座ってパイプオルガンの演奏が始まり、みんなでチェコ語の賛美歌を歌いました。キュビズム様式のパイプオルガンなんて、本当に驚きです。

そしてこの教会の奥に牧師さんが住んでいるのですが、ここが一番ステキなのです。

床もこの白いドアもキュビズム

古いのだけど、木製の味わいある階段。

踊り場にある、印象的な丸窓。

すっかりここが気に入り、「ここでもう一度結婚式したい」と旦那に言ってあきれられました。

そもそも今回ここに来れたのは、ボジェナ・ニェムツォヴァー協会のおばさまたちのおかげ。

『babička(バビチカ=おばあちゃん)』という本で有名な小説家Božena Němcováは、500kc札にもなっていて、とてもきれいな人だったのだとか。
この小説家のファンの集いが偶然、このPečkyの教会で催されることになり、便乗させてもらったのです。このおばさまたち、私がキュビズムファンだと知ると、聞いてもいないのにチェコの地方の知られざるキュビズム建築の話を口々に教えてくれ、さすがどこの国でもおばさま情報ネットワークというのはあなどれないと思い知りました。