テクノパーティ、CZECH TEK事件

チェコの首相イジー・パロウベック


とある電柱に最近張られた首相イジー・パロウベック(Jiri PAROUBEK)のポスター。下に書かれているチェコ語を英語に訳すと“Tomorrow you will be beaten!"(明日おまえはやられるだろう!)と脅し文句が読めます。
発端は、7月末に西ボヘミアムリーネッツ(MLYNEC)という小さな村で開催されたテクノパーティに警察が乗り込み暴力沙汰になった事件。いまだにチェコの新聞やTVを騒がせているワケは、政治にまで波及したから。
無許可の土地に5千人ほどのテクノファンが集まり、歌やダンスを楽しんでいたところに警察がこん棒やら催涙ガスなどで無理やり解散させようとし、警察側も含め百人近く怪我をしたもの。当日の様子はこちらの写真で→http://czechtek.muzika.cz/foto/fotky_050730_mlynec_policie.php
翌日、この警察の暴力がやりすぎ、ということで責任を追求すべく内務大臣フランティシェック・ブブラン(Frantisek BUBLAN)の辞任を求める大規模なデモがプラハで開催された。会場がウチの近くだったので、モヒカン頭やヒッピーっぽい服装の若者たちで近所の居酒屋は満席。TVには引っ張り出されたハヴェル元大統領の姿も。内務省前でのデモの様子http://czechtek.muzika.cz/foto/fotky050730mvcr.php
テクノファン側か警察側かで政治家も分かれて論争になり、クラウス大統領は警察のいきすぎを批判、かたや警察側の内務大臣、それを擁護する首相らが槍玉にあげられ、右上写真のような事態になっている。街のあちこちに“Hudba neni zlocin!"(音楽は犯罪ではない!)と書かれた旗も。
プラーグポスト(プラハの英字新聞)http://www.praguepost.com/P03/2005/Art/0818/news2.phpによると、チェコ人の半分ぐらいは警察に同情、見た目に奇抜なテクノファンが大挙して田舎町に繰り出し、無許可の私有地で騒ぐ、ということに納得していないよう。でも後の半分ぐらいは、罪のない、ただ音楽やダンスを楽しんでいた若者が殴られている、と警察に批判的。年代的にも前者は50代以上の主な意見、後者は若者の意見として、庶民も見事に意見が分かれている。
仲裁役を頼まれたハヴェル元大統領もテクノファンの代表と話をして、彼らに同情的なようだ。確かに無許可の土地に入り込むのはいけないが、繰り返し放映される取締りのシーンを見ているとやりすぎの感は否めない。チェコの人はこのような警察の態度を見て、共産党時代の取締りを即座に思い出す。この警察の派遣にかかった費用(約3千万コルナ!)も批判の対象に。
今日は日曜日。日本と同じく政治家が出る討論番組があるのだが、CZECH TEK以降、支持率を落としている渦中の首相は出ずに共産党の党首グレベニーチェック(GREBENICEK)が登場。ビロード革命から16年、今年の5月1日のメーデーの集会は大盛況だったし、共産党はなりを潜めるどころか20%の支持率とかなり高い。共産党時代を知らない若者の支持者も多く集めている様子。
37年前の今日、夏休みでひいおばあさんのウチにいた旦那は早朝5時、玄関をたたくけたたましい音で目覚めた。隣のうちの人と広場の通りまで行くと、プラハから西に90キロほどのこの小さな町に東ドイツ軍の戦車が目の前を走っていたそう。私も書物や映像の中でしか知らないことだけれど、世界を震撼させたプラハの春も遠い記憶になっていくのだろうか。。。