オルカーン・キリル暴れまくる!

文房具屋さんの前もこの通り…


「家の屋根が飛んだ」「車で帰ったけど、コントロールが効かずすごい怖かった」など私の周りでもコワイ話ばかり聞いた金曜の朝。この木曜(18日)から金曜(19日)にかけてのものすごい暴風に、チェコ全国、いやヨーロッパ中がひどい目に遭いました。

20日付のMF Dnesは、1面こそ新内閣の話でしたが、全4面にわたるオルカーン関連記事の大特集。それによると、この前代未聞の暴風のためにイギリス13人、ドイツ11人を含む全ヨーロッパでも47人の犠牲者を出しました。列車の遅れはもちろん、英仏間の船は欠航、ロンドンのヒースロー空港では100件以上の欠便が出るなどヨーロッパ全体で交通機関が麻痺。
チェコでは倒れた木に車がぶつかったりの交通事故などで5人が犠牲に。南ボヘミア地方の3分の1世帯で停電したり、森では一度に200本の木が倒れるなど、消防車出動が一日だけで約4000件と2002年の洪水以来の災害になってしまいました。チェコの北、リベレッツの動物園ではヤギがオルカーンのショックで死んでしまったとのこと。

こんな日はおとなしく家にこもるに限りますが、どうしても行きたかった建築講義があったので暴風の中、ヴルタヴァ川を渡るはめに。。。トラムも怖いし、歩いて行ったのですが、軽くもない体が車道に押し出されそうになるのを必死に踏ん張りながら、やっとのことで会場に。

雨はほんの少し降っただけでしたが、風は日本の台風以上。向かい風だと目も開けられないぐらいでした。

近所の道路もキリル氏がどこからか運んできた枯葉が吹き溜まり、とんでもないことに。

チェコで一番高い山(といっても1602mだけど)、スニェシュカ(Sněžka)では風速216km/hを観測。風速115km(/時間)以上の暴風をオルカーン(orkán)と呼ぶそうで、ハリケーンなどと同様、クリスチャンネームが付いています。今回はキリル(Kyrill)。

元々はアメリカで始まったこの慣行、ヨーロッパに入ってきたのは1954年。ドイツはベルリン自由大学の気象研究所で名付けられるそうですが、女性差別にならないよう(ハリケーンの名前はそういえばなぜか女性の名前…)年ごとに交替で付けているんだとか。

そして2002年の11月からは、気象学者じゃない一般の人も、お金を出して名前を登録すれば、名付け親になれます。面白いのは女性の名前のほうが値段が高いこと(299ユーロ。男性名は199ユーロ。しかしスーパーみたいな値段のつけ方が笑えます…)。なんでも女性のほうが長生きだからとか。このお金は大学の研究や教育のための資金として使われます。

しかしどうしてこんな暴風が?

翌日あちこちで聞いたセリフが“to jsem nikdy nezažil(a)”(=今までこんな目にあったことない)というもの。いったいどうしてなのでしょうか。

直接の原因として、北極からの冷たい空気と、暖かい空気がヨーロッパの空の上で激しく闘ってる過程で暴風が発生したのだそうです。気象学者が明言を避けるように慎重に説明しているところを見ると、はっきりとはまだわからないのかもしれませんが、このまれにみる暖冬も関係があるのでしょう。

この40年間で地球は0.6度ほど温暖化していて、気象学者によるとこの数字はかなりの上昇率なんだそう。海が“蓄電池”のような役割を果たしていて、熱を溜めているけれど、いったんそのエネルギーが放出されると、空気の流れを劇的に変えてしまうそうです。

もうこの先、中欧でもこの台風のようなオルカーンはまれにみる天気、ではなくなっていくのだとか。。。