あるヒットメーカーの死

チェコの国民的ヒットメーカーだった。


29日(月)の新聞の一面に載りチェコ国民を驚かせ、そして翌日30日のMF Dnesには見開き2ページを割いて、各方面からのコメントや追悼、その自殺の謎について書かれた、チェコのもっとも成功した音楽家のひとり、Karel Svoboda(カレル・スヴォボダ)氏(68歳)。

あのカレル・ゴットには80もの楽曲を提供、他にもビロード革命時のシンボル的歌手、マルタ・クビショヴァー(Marta Kubišová)、チェコ語の教科書にも載っていた(笑)ルツィエ・ビーラー(Lucie Bílá)、ミハル・プロコップ(Michal Prokop)、ヘレナ・ヴォンドラーチコヴァー(Helena Vondráčková)といったチェコのポップ・ミュージック・シーンの大御所たちに必ずや彼のヒット曲がある、というようなひとです。

晦日忠臣蔵のごとく、チェコのクリスマスの定番になっているチェコ版シンデレラ『ポペルカ』(Popelka)のなかの“Tři Ořísky”(三つの木の実)も彼の曲。クリスマスの雰囲気と、チェコ語のリズムによく合う佳作。こちらからさわりを聴けます→http://jyxo.cz/s?q=Tri%20orisky&d=mn

カレル・ゴットとのコンビは、日本の70年代のアニメ『みちばちマーヤの冒険』チェコ語ヴァージョン(Včelka Mája)の主題歌もあります。話がそれますが、チェコ人とマーヤ話になると、なぜみんなドイツのアニメでしょ、って言うのかしらと疑問に思っていたけれど、調べてみるとなんと1912年までさかのぼり、ドイツのボンゼルスさん(Waldemar Bonsels)という方が原作なんだそう。でもアニメーションは日本で製作されています。
http://www.nifty.com/nipponanimation/cs/title/detail/034/1.htm

歌手への楽曲提供だけでなく、テレビシリーズのテーマ曲、映画、ミュージカルと幅広くこなし、スヴォボダ氏みずから、Velký dělník šlágrů(偉大なヒットメーカー労働者)あるいはベルトコンベアー脇の労働者というように自分の仕事を揶揄していました。若い二度目の奥さんと2歳の息子を残し、ピストル自殺とは多くの人にとって衝撃でしたが、以前から疲れているようだった、自殺を前から考えていたふしがあった、という友人たちの言葉も。奥さんのインタヴューによると、仕事を断るといった兆候もなく、ロマン・ポランスキー監督との仕事の予定もあったのだとか。

この突然の訃報のうえに、自殺発見時の彼の写真が何者かによってマスコミに売りつけられそうになったとあって、犯人探しも話題に(どうやら現場検証した警察官のひとりのようで、現在調査中)。

彼の最新作、ミュージカル『Golem』が現在かかっている市民会館(Obecní dům)前にあるヒベルニア(Hybernia)劇場には黒い旗が掲げられ、作曲家の死を悼んでいます。