チェコのハーブ&スパイスあれこれ

チェコの冬はこれで決まり


ただしきニッポンの冬、こたつで蜜柑、がかなわぬチェコでも、日本よりかなり小さいものの蜜柑は売られていて、時々食べます。するとどこからともなく旦那が現れ、「皮を捨てないで!」と皮を集め、アルミホイルの上であぶり始めます(ガス台の上で)。すると台所にいい匂いが漂う。。。と安上がりな(貧乏くさいとも言う)アロマテラピーをしている我が家。

でもこないだは私が蜜柑を食べてもいないのに(旦那は皮拾いに徹しててめったに食べない)、柑橘系っぽい香りが。なんだろうとのぞくとこれ。

チェコ語で“jalovec”(ヤロヴェッツ)、ジュニパーベリーというもの。日本でも紀ノ国屋あたりには置いてあったのかもしれませんが、人生で初めて見るもの。アロマテラピーをする方なら、エッセンシャルオイルもあるのでなじみの名前なのかも。お酒のジンのもと、とも教えてもらいました。
ジンの入ったカクテルなどはそんなに好きではなかったけれど、この5ミリ直径のこげ茶の実をかじってみると、甘苦い、それでいてピリっと刺激的な味でおいしい!
このジュニパー、ヨーロッパに自生する松のような葉をもつ常緑樹(ヒノキ科)で、緑色の実が熟すと上の写真のようになります。
肉料理(特にいわゆるジビエ)の臭み消しに、酢と相性がいいのでドレッシングに、甘みを生かしてジャムやパン生地に、となかなか万能なよう。
この実の存在を知ってから、これをホットミルクに香り付け(こまかく砕いてホットミルクに入れて漉すだけ)して、ほんの少し砂糖を入れて飲むのにハマっています。

利尿作用、消毒解毒の効果があると古代から大切にされた木で、中世のペストの流行のときにも消毒治療に重用されたんだとか。毎日5〜8粒いただくのも健康にいいんだそう(ただし強い効果なので妊婦には適さず、とのこと)。

それからこれは何でしょう? フランス&エスカルゴ好きならおなじみのハーブ(キク科)。

近所のスパイス&ハーブショップで見つけたエストラゴン(別名タラゴン)。これも噛むとなんとも甘い独特の味。チェコではエスカルゴは一般的ではないけれど(エスカルゴはそのへんをウロウロしているっていうのに…)、肉、魚、卵、ドレッシングとその守備範囲は広いようです。今回はチェコのおつまみでおなじみのチーズディップに混ぜてみました。

エイダムなどの固めのチーズとにんにくをすりおろしてマヨネーズと混ぜ、塩味をととのえエストラゴンを混ぜるだけ(分量はすべて適量…っていい加減)。パンや野菜の上にのっけてどうぞ。

でもなんといってもチェコのハーブはマジョーラムとクミンを置いてほかにありません。チェコ語でマヨラーンカ(majoránka)、クミーン(kmín)で通じます。

マジョーラムはじゃがいもお好み焼きのブランボラーク(bramborák)やグヤーシュ(guláš)にもたっぷり入っています。「こうするともっと香りが立つから」と旦那ママが指さきでぐしゃぐしゃっと軽くもんでから入れていたのを見て、以来私もマネしています。
すうっと芳香のあるクミンも和食にはなじみがないけれど、こっちだとパンには織り込まれているし、ザワークラウトにも発見できます。何かっていうとお肉料理に使われている気がします。鶏、鴨、うさぎなどの肉に塩こしょう、そしてクミンもたっぷり混ぜていざ丸焼き!みたいな。シンプルだけれど、とてもおいしい。付け合せはマッシュポテト(bramborová kaše=ブランボロヴァー・カシェ)かごはん(笑)。

そしてこの時期、クリスマスマーケットでも一番人気のホットワインチェコ語でスヴァジャーク(svařákまたはsvařené víno=スヴァジェネー・ヴィーノ)もスーパーの安い箱の赤ワイン(白でも可)にスパイスが揃えば家庭でも気軽に楽しめます。


粉末のホットワインミックスもあるけれど、ここはまるごとスパイスが入った“celé koření"と書いてあるのを選ぶのがポイント。中味は大体、シナモン、クローブスターアニスといったところ。
作り方は鍋にワインを入れ、沸騰寸前で火を止め、すぐにホットワインスパイスミックスを加えてふたをし、10分ほど置いたらスパイス類をとりのぞきます。後はお好みで砂糖やレモンを加えて暖かいうちに。

今年は暖冬のせいか、去年ほどスヴァジャーク消費量あがっていません。チェコに限らず寒いヨーロッパではどこでも見かける冬の飲み物ですが、てっとりばやく温まるにはもってこい。クリスマス市などの屋外はもちろん、カフェやホスポダ(居酒屋)でもたいていメニューに載っていますので、お試しあれ。